性被害にあわないために

良い本を読みました。

その名も、
「とっさのときにすぐ護れる 女性のための護身術」

元自衛官の伊藤祐靖さんの書かれた本です。


カウンセリングをしていると
過去に性被害にあわれたり
機能不全の家庭で育った方
にお会いすることがあります。


私はEMDRのような
トラウマ治療を専門にしているわけではないですから

クライアントさんも
「トラウマ治療をしたい」

と明確な目的をもって
カウンセリングに来る方ばかりではありません。


むしろ「生きづらさ」や
「いなくなりたい」といった主訴の背景に
実はこうした性被害や虐待のトラウマ
を抱えている方が多くいらっしゃいます。


そうした背景を持つ方たちの数はけっして稀ではなく
むしろ人知れず傷ついている方
の潜在的な多さに気づかされます。


さてこの本で書かれていることですが
私が「なるほど!」と思った個所を紹介します。


なによりもまず
「被害にあわないためには
加害者の視点に立って考える」

という点ですね。


これは思いつきそうで
考えたことのなかった視点でした。


自分は女性なので
「女性を犯行のターゲットとして物色する男性」
の気持ちを想像しようとしたことすらありませんでしたし

そうした視点に目が行く前に
「性犯罪者はすべて死刑にすればいい」
くらいの思考が働いてしまっていたから
ではないかと反省しています。


本には、加害者は

「サーチング(獲物を物色する行為)」
「ターゲッティング(獲物についての情報を集め
攻撃パターンを考える行為)」
「アタック(襲撃)」


の3つの過程を必ず経てから
犯罪行為に及ぶ
と書かれていました。


そして私たちが犯罪被害にあわないために
まず大切なのは
この「サーチング」に引っかからないことだと。


たとえサーチングに引っかかってしまっても
次の「ターゲッティング」で
「この獲物を標的にするにはリスクが大きい」
と感じさせることが大切
だとも書かれていました。


当たり前ですが
カウンセリングでトラウマを抱えた方
とお会いする場合
犯罪行為が「既遂」されてしまっているわけです。


私たちの出番はそこからなのですが
当然ながら
「被害にあわない」ことが何よりも重要です。


そのためにできることや
知っておいたほうがいいことがあるのなら
ぜひ積極的にその知識を
活用していきたいと思いました。


では「サーチング」に引っかからないためにはどうすればいいか
「ターゲッティング」の段階で
犯行を諦めさせるためにはどうすればいいか
についてですが

作者は

「狙われるのは、一番弱い人。
強さ、弱さは目つき、姿勢、
立ち居振る舞いで判断される。
群れの中で一番弱い個体になってはいけない」

と書いています。


そのためには

「正しい姿勢でいることが重要」

であるとし

本のなかではいかにして
「正しく立つか」
「正しく歩くか」
のエクササイズが紹介されています。


カウンセリングをしていて
性被害にあわれた方は決して派手なわけでも
露出が多い服装をしているわけでも
男好きがしそうなわけでもありません。


そんなことは、正直何の関係もないのです。


ただ唯一共通していると感じるのは
「抵抗しなさそう」
「黙ってしまいそう」
「泣き寝入りしてしまいそう」
といった漠然とした自信のなさです。


もちろん
すべての被害者がそうではないと思います。

あくまで私がお会いした中だけの話です。


そもそも私がお会いするクライアントのなかには
幼いころから機能不全の家庭で育ち
暴力や性が身近にあり

本来そうしたものから
守られるべき存在であるにも関わらず

最初から
「NOと言っていい」
「NOという権利がある」
ことさえ知らずに育ったかた
が多くいらっしゃいます。


その方たちは
自分が遭遇する理不尽な扱いに対し

「これはおかしい」と感じ
「嫌だ」と言い
そして「怒ってもいい」
ことさえ知らずにいるのです。



カウンセリングを通して
過去のトラウマを治療するだけでなく

これからの人生を胸を張って生きれるように

もう二度と誰かの「ターゲット」にされないよう

ターゲットにされても戦う意思を示せるよう

に援助していきたいと思います。


この本にはこの他にも多くの
「なるほど!」
があったのですが

後半は特に
具体的な身の護り方
を伝授しています。


例えば
「手首を掴まれた!」
とか
「肩に手を回してきた!」
ときにどうするかということが
写真付きで分かりやすく書かれています。


面白いのは著者は
「エスカレートする前に、適切に拒絶の意思を示して」
という意味合いで紹介されている手法が

私からしたらどう見ても

「拒絶の意思というより
はっきりこれは攻撃なのでは・・・」

というくらい
相手にダメージを与える方法
が紹介されていることです(笑)


これ、見知らぬ人ならやってみる価値はあるし
試してみたいけど

顔見知りだとかなり躊躇するなぁ
と思いましたが

そこはさすがに元自衛官ですね。

正直
カッコいいです。


最後に私がこれまた感心した供述が
「知っておきたい指の役割」
というコラムです。


今まで何も考えたことのなかった指の役割! 

それが、とても端的に説明されています。


例えば

「人差し指は特定の何かを指したり
スイッチを押したり
一点を押さえる動作で活躍する。
しかし力強さでは、中指に劣る」

「薬指と小指は
不器用で力強さもないため
日常ではさほど活躍していないようにも思われる。
・・・(しかし)力を入れて握る動作には
薬指と小指が大きな役割を果たしている」
など。

そして人の手として最も特徴的な
親指についての供述があり
「非常に力強く思える親指は、案外もろい」
とあります。


護身術ではこの親指を手の甲に向けてひねるだけで
とっさのときに身を護ることができる例が載っています。


女性にぜひ読んでもらいたい本ですし
「弱者」や誰かの「獲物」ではなく
力強く人生を生きていけるようになるために
クライアントにも紹介したい本だと思いました。