悩みをどこに相談すべきか

以前友人に
「悩んだとき、カウンセラーに相談しないの?」
と聞いたら
「そこまで病んでない」
と言われて衝撃を受けた話をしましたが
本当そこまで病んでなくても
気軽にカウンセラー(できれば臨床心理士とか)
に相談してほしいと
私たちは常に思っています。
でも、じゃあ気軽に相談できるカウンセラー
(しかも良質な)がどこにいるのか?
と改めて考えてみると
確かに申し訳ないほど
カウンセラーがどこにいるのか
同業者の私でさえもよく分かりません。
というのも臨床心理士の職域に関していえば
ほぼ医療と教育で二分されており
簡単にいってみれば
臨床心理士に相談したいと思ったら
クリニックか
スクールカウンセラーくらいしか
出会う場所がないとも言えるからです。
(小さいお子さんの発達相談など、また別の相談機関はありますが)
そもそもスクールカウンセラーは
その性質から言って
お子さんがいらっしゃらなければ
利用できませんし
最初から自分の悩みを話したい
(子どものこと以外で)と思って
スクールカウンセラーを利用される方
はあまりいらっしゃらないと思います。
じゃあカウンセリングもできる
クリニックに相談に行くかといえば
やはりそこは
「ドクターの診察を受ける=病気である」
という図式になり
少なくともちょっとした人生相談では
まず間違いなく医療の受診には至らないわけです。
だから前述の
「そこまで病んでない」
という認識になるのでしょうね。
となると残るは占い師か
個人開業しているカウンセラーを探すか・・・
ということになってしまいます。
ここでびっくりするのが
この占い市場の大きさなのですが
まぁこれはちょっとわきに置いといたとして
では
個人開業しているカウンセラーで信頼できるのはどこか
という問題が出てくるかと思います。
開業しているカウンセラーのHPなどで
たまに
「自分がかつて〇〇で悩んでいた。
だから〇〇の気持ちが分かる。
よって〇〇の相談に乗れるカウンセリングを始めました」
という方を見かけます。
(追記:この場合のカウンセラーとは、
多くは臨床心理士以外の民間資格
または自称カウンセラーの方が多いです。
実際のところ
カウンセラーという名称は
誰でも勝手に名乗ることが可能です)
あくまでも個人的な意見ですが
このようなカウンセラーに相談するのは
「もっとよく検討した方がいい」
と思います。
理由はカウンセラーの意識が
「〇〇の気持ちが分かる」レベル
で止まっているからです。
はっきり言いますが
「相談者の気持ちが分かる」
ことと
「相談者の援助ができる」
ことは
イコールではありません。
カウンセラーが
「かつて自分も悩んでいたから、
同じ悩みを抱えた人の気持ちが分かる」
と思っていて
なおかつ意識がそこ止まりであるとしたら
それは非常に危うい認識だと言えます。
なぜなら治療者としてスタートするためには
その自分の問題を徹底的に見つめなおし
自分のなかでその問題に対する固執
わだかまり
思い込みや認知のありかた
を十分に意識し、
できれば解決しておく
必要があるからです。
非常に単純な例をあげますと
自分自身に母子関係の問題があったとする。
そのことで悩み、苦しみ
「母親との関係で悩む人の気持ちが分かる」
と思ったとします。
でもそれだけですと
どのような悩みを抱えた
クライアントさんが来ても
なんでもかんでも問題を
「母子関係」のせいにする
しかも自分が解決に用いた
思考パターンを
クライアントに押し付ける
ということが生じます。
それは決して
良質な治療とは言えません。
かつて北山修先生の
研究会に参加していたとき
北山先生がおっしゃっていた
ことがあります。
「先生には私の気持ちが分かりっこないって
何度クライアントに言われたことか。
男だから女の気持ちが分からないとか
子どもを産んだことがないから分からないとか。
でも、そんなこと言ったら
男性のセラピストは
一生女性のクライアントの気持ちなんて分からないし
女性セラピストは
男性のクライアントの気持ちが分からないことになる。
大事なことは
気持ちが分かるかどうかってこと
だけじゃないんだよね」
そう言われて
なるほどその通りだな
と感じたことがあります。
クライアントの気持ちが分かる
理解できる
少なくとも理解しようと努めることは
カウンセラーにとって前提条件であり
カウンセリングの目標ではありません。
もっと言えば
完全には理解できなくとも
援助することは可能なのです。
それが
プロとしての技術だと言えます。
そんなわけで
悩みを相談したいとき
どこに行ったらいいかということですが
少なくともお金を払ってまで
相談に行くのは避けた方がよい
カウンセラーについてはお伝えできたのではないか
と思います。
(どうかな?)