自閉症スペクトラムが持つ食へのこだわり


自閉症スペクトラムと
呼ばれるお子さんのなかには
食へのこだわりというか
かなりの偏食がある子がいます。


偏食のある子がすべて
自閉症スペクトラム
というわけではありません。


ただ食へのこだわりがある
自閉症スペクトラムのお子さんのなかには
偏食ということばでは
片づけられないほどの頑固さや
「食べられるものの幅の狭さ」
がある子がいます。


私が遭遇したなかでは
「とにかくごはん(白米)を食べない」
という子もいましたし

逆に
「ごはん(白米)しか食べない」
という子もいました。


わりとよく遭遇するのは
特定のメーカーのビン詰めや缶詰しか食べない
という子ですね。


ある子は鮭フレークしか食べなかったのですが
お母さんが貰い物でいただいた
高級な鮭フレークをついうっかり与えてしまったところ

味をしめた(?)のか
それ以外の鮭フレークは食べてくれなくなった
というグルメな子もいました。


「とにかくごはん(白米)を食べない」子は
保育園があの手この手で白米の形
味を変えてお昼ご飯に出してみても

ことごとく食べてもらえず
保育士さんたちが
「これ以上もう料理のレパートリーがありません」
といって嘆いていましたっけ。


お母さんたちにしてみても
食事は毎日のことですし
栄養のバランスを考えたら
気が気ではありませんよね。


これを読んで
納得してもらえるかは分かりませんが

私からの提案は
「お子さんの食へのこだわりに
あまりこだわらなくても大丈夫」

ということです。


無責任に感じるかもしれませんが
私もクライアントさん
(保護者や保育士さん)
と一緒になって
あれやこれやと
知恵を絞って試してみたのです。


その結果なにが言えるかといいますと

「その食へのこだわりは
何だかんだで
あくまでも一時的なものだった」

ということです。


正直、数か月は
特定のものばかり
食べるかもしれませんし

逆に
特定のものは
食べてくれないかもしれません。


でも何年もそれしか食べない
というお子さんには
今のところ
会ったことがありません。


どの子もなんだかんだで
他のものも食べ始める。

しかもある日突然
何の理由もなく。


「とにかくごはん(白米)を食べない子」
の場合もある日急に
ごはんを食べたかと思ったら

次の日からは
何事もなかったかのように
ごはんを食べてくれるようになり

保育士さんたちが
拍子抜けしていました。


自閉症スペクトラムのお子さんのなかには
普通の人より
味覚や嗅覚が
鋭いお子さん
がいます。


そのせいである特定の食べものが
食べられなかったり

逆にある特定のものだけ
好むことがあります。


そして思うに
何よりこの子たちは
「得体の知れないもの
(食べたことがないもの)」
は嫌なんです。


そして
「得体の知れないもの
(食べたことがないもの)」
「味の予測がつかないもの」
に慣れるのに
私たちの想像以上に
時間がかかるのです。


ただそれだけなんです。


もしもあなたが友だちの家に行って
ランチに
「ナマコみたいな形状をしている
青くてちょっとスパイシー
な匂いがするもの」

を出されたらどう反応しますか?


「え、ちょっと待ってこれ何。
食べられるの!?」
ってなりませんか?


友だちのことを信頼していて
なおかつ
これが食べ物だと認識できて
食べても安心で
さらには味が不味くない。


これらのことが
保証されなかったら
出されてすぐに
口に入れようと思う人
はいませんよね?


私たちは日常的に接する食べ物に対して
ある程度知識があり

それらの味の予測ができ

食べても安心だと

ほとんど無意識に
理解できているからこそ
深く考えることなく
食べ物を食すること
ができるのです。


でも自閉症スペクトラム
と呼ばれるお子さんたちは違います。


年齢も小さければ小さいほど
味の予測はできませんし
初めて見る食べもの
は多く存在します。


いくら信頼している
お母さんや保育士さんが
出してくれたといっても

それだけで
保守的で頑固な彼らが
すぐに食べようと思えるほど
彼らは柔軟な対応
は取れないのです。


それにお母さんや保育士さん
が作った料理は
日によって味に僅かな違い
が生じますよね? 


その点、食品メーカーが
生産しているビン詰や缶詰なら
味は常に一定です。


彼らが好むのはこの
「常に味が一定しており
一度食べたら
味の予測が容易であること」
なのです。


けっして
お母さんの手料理が嫌い
なのではありません。


だからもしもお子さんに
このような食へのこだわりがあるのなら
あまり気にせず
子どもが欲しがるものを
与えればいいと思います。


でもそのときに
「うちの子はこれしか食べない」
と決めつけてはダメですよ。


今は食べないかもしれませんが
食卓に出しているうちに
いつの間にか慣れてきたり
興味を持ったりして
急に今まで食べなかったものを
食べ始めることがありますから。


なので自分たちの食事は
普通に用意し
一緒の食卓を囲み
その中でお子さんが食べられるもの
を与えてあげればいいと思います。


時間は他の子より
かかるかもしれませんが
ある日突然
食べ始めるかもしれませんよ。