医者の診断を受けるということ


子どもの問題行動で悩んでいたり

落ち着きのなさや

コミュニケーションの取りづらさ

育てにくさを感じ

「うちの子、発達障害なのかな?」

とモヤモヤしている保護者のかた。



その保護者のかたたちが悩むことのひとつに

「医者にかかるべきかどうか」

ということがあるかと思います。



医者にかかったほうがいいのかもしれない
と思いつつ

何処にかかればいいのか

またかかったらどうなるのか

不安は尽きないことかと思います。



まずはじめに押さえておきたい事柄として

医師法第17条に

「医師でなければ、医業をなしてはならない」

と規定されており


この医行為にあたるもののひとつが

「診断をする」「診断名をつける」ことになります。



平たく言うと

「医者でなければ診断名をつけることはできない」

ということです。



よく保護者さんから

「うちの子ADHDですか?」

「うちの子、発達障害ですか?」

などと聞かれるのですが


このとききちんと勉強をされている
カウンセラーなら

決して「ADHDですね」「発達障害ですね」

などとは言いません。


なぜならそれが医師の独占業務であり

医師にしか診断名をつけることが許されていない

と知っているからです。



そのため

「診断をつけて欲しい」

「診断名が欲しい」

とニーズがはっきりされている方は医者
(できれば、発達障害を多く診断している小児科医)
にかかった方がいいでしょう。



ただここが大きなポイントですが

こと発達障害に関しては

「診断をつけることのメリット」がどの程度あるのか

よく考えてみる必要があるということです。



診断名をつけることによって

「この子の育てにくさは私のせいではない。

この子の持って生まれた特性なんだ」

とわかって安心する保護者の方もいらっしゃいます。



グレーゾーンというより

はっきり診断がつけられ

その結果「療育手帳」や

「精神障害者保健福祉手帳」

の取得を考えるという場合もあります。



けれども診断をしてもらう最大のメリット
であるはずの

「治療法がある」ということに関しては

発達障害の場合当てはまらないのです。



診断をしてもらうということは

例えばその症状が「風邪」なのか
「インフルエンザ」なのか
「肺炎」なのか

病気の原因が分かるということであり

その原因によって「治療法が分かる」
ということです。



はっきりいってたいていの人なら
自分の咳、鼻水、発熱が「風邪かな」
くらいのことは分かるわけです。


でも咳が止まらない、高熱が続くとなると

それがただの風邪なのか
インフルエンザなのか
肺炎を起こしているのか

その判断まではできない。


そのため医者のところでちゃんと検査を受けて

診断をしてもらう必要が出てきます。


そしてちゃんと診断してもらえれば

それに対応した治療をしてもらえるわけです。


でも今現在

発達障害を治す薬というものは存在しない

(ちなみに、風邪も薬では治りませんけどね)



そもそも発達障害ははっきりと「原因不明」と言われており

「おそらく生得的なもの」

と専門書にだって曖昧なことしか書かれていません。


発生原因が明らかでないのだから

その治療機序も明らかではないのです。



そのため医者にかかったとしても

またそこで発達検査をしてもらったとしても

発達障害そのものが治るわけではないのです。



病院によっては「療育」をしているところがあるので

医者にかかって発達検査を受けて

そこで療育を受けられることには価値がある

と思います。


またそこで子どもへの関わり方を
アドバイスしてもらえることにも

価値があると思います。



でも、ただ外来で医者の診察を受けて

薬をもらうだけの治療だとしたら

正直いってあまり意味はないのではないかというのが


多くの保護者のかたや発達にでこぼこのあるお子さん

とお会いして感じた私の感想です。



私のスタンスは、


育てにくさのあるお子さんに
保護者であるあなたが
どう関わったらいいかが分かる。


「今」だけでなく「今後どうなるか」
の見通しをもつことによって
今の不安が軽減される。


子どもの発達特性を理解することによって
子育てのイライラ、不安を軽減し
子どもの二次障害を防ぐ。


できればできるだけたくさんの子どもたちが
みんな多かれ少なかれ得意・不得意を持ちながらも
社会にでていくことができる。


というものです。


そのために一緒に何ができるか考えたり

学校への働きかけ方を考えたり

発達特性を理解するために専門的な立場から
アドバイスを提供したい

と思っています。