精神科クリニックでの研修の日々

心理臨床でははじめて受け持つ
個人セッションのことを
イニシャル・ケースと呼びます。
頭文字を意味するイニシャルですね。
最初のケースという意味になります。
私のイニシャル・ケースについては
また改めてブログに書きたいと思いますが
まぁまぁな心理オンチを自負していた私。
このイニシャル・ケースがしょっぱなから
かなり難しいケースであったこともあり
(というかそもそも新人に任せるようなケースではない)
私は早々にH先生にスーパービジョンをお願いしました。
スーパービジョンというのは自分より
経験を積んだ上級者の治療者に
自分のケースを報告して適切かつ
辛辣(?)なアドバイスを求めるものです。
スーパービジョンは義務づけられているわけではないので
あくまでも個人個人の判断になりますが
しょっぱなからH先生にお願いできた私は
かなりラッキーだったと思いますし
イニシャル・ケースからスーパービジョンを
お願いできるというのも相当恵まれていたと思います。
そしてH先生によるスーパービジョンですが
もうなんにしろご老体なもので
「面接をカセットテープに録音して持ってこい」
とか言うんです。
…泣ける!
普通は面接記録を自分で紙に起こして
ペーパーで見てもらうのがほとんどなのに
よりによって録音してこいとか!!
でももちろんルーキーの私に拒否権はないわけなんです。
そもそもクライアントとの面接も待ったなしでやってくるわけですし。
そこで泣く泣く(マジで)クライアントさんに
「私の勉強のために面接を録音させてもらっていいですか…?」
と頼み、ありがたいことに快くOKをもらい
ド緊張しながらカウンセリングしている音声を
その都度H先生にチェックしてもらうという
いくつになっても生きた心地のしない
過酷な研修を受けました。
私のはじめてのカウンセリングの様子を
カセットテープで再生するのを聞きながら
H先生はじっと目をつむっています。
まさかおじいちゃん寝ているのでは…?
と疑い同じスタッフルームにいた先輩カウンセラーに
目で「院長、大丈夫ですかね?」と訴えたところ
先輩カウンセラーからは「大丈夫よ」という
温かいまなざしが…
そしてじっとテープを聞いていたH先生が
聞き終わったあとに言ったことばは
「お前は統合失調症の治療に向いている」
というものでした。
細かいアドバイスはもちろんいっぱいしてもらいましたが
何故かその一言がとても印象に残っています。
そして別の機会に別のドクターの
グループスーパービジョンを受けたときにも
私はそのドクターから
「きみは統合失調症の治療に向いてるね」
と言われたのでした。
スーパービジョンって自分の未熟さが
すべてさらけ出される体験で
本当に身が縮む思いをするのですが
こうした経験を積みながら本当に少しずつ
自分の技術を磨いていったのだと思います。